言葉を丁寧に扱う人が好きだ。
実際に話す言葉が丁寧か否かではなく
自分の口から発する、指先で打ち込む言葉が
それを受け取る人にどんなふうに届くだろうかと
考える人が選ぶ言葉には
自分以外の誰かへの思いやりが見える気がする
私たちは言葉を使って生きている
だからこそ言葉を丁寧に扱う人が好き
そんなことを考えていたら
図書館でこちらの本と目が合った
1ページ捲った先の1行目
“ 言葉のあるところには、すべて校正がある。 ”
吸引力の強い言葉だった
表紙の写真は実際のゲラ(校正のための試し刷り)、
そこに書き込まれた赤い文字と線
もっと知りたいという欲を掻き立てられた
書籍紹介
校正・校閲11の現場 こんなふうに読んでいる
牟田 都子(KTC中央出版)
TVのテロップや辞書、地図、パンフレットなど
私たちが目にしている言葉はどれも
元を辿れば校正者がいる
文芸書を中心に17年校正をしてきた筆者が
「それぞれの場所で働く同業者がどんな気持ちで
どんな仕事をしているか」を知るために
11箇所で働く校正者と対話を重ねていく
普段知る機会があまりない校正の現場と
そこで働く人々の実際を知ることができる一冊
校正・校閲の違い
校正とは「校正刷りと原稿とを照合するなどして文字や内容の誤りを正し、体裁を整えること」(『大辞林』)であり、校閲は「印刷物や原稿を読み、内容の誤りを正し、不足な点を補ったりすること」(同前)
現代における校正・校閲は、どちらか一方のみを行うというより、両方が並行して行われることが多く、人によって(組織によって)名乗り方が違うのもそのためです。
P.3 はじめに より引用
これより先は、「校正」と「校閲」
両方の意味を含め「校正」と書いていきます
読了した感想
校正という仕事へのイメージの変化
この本を読むまで私は校正は
誤植がないか確認したり、文章の内容が合っているか
事実確認をしたりする仕事だと思っていた
これは完全に本を読む前に見たドラマ
『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』の影響
※ 後述あり
この本を読み終えて 校正は
◼︎「書き手」の思想・意図・目的を汲み取る
◼︎「読み手」に分かりやすく正確に伝える
両者の立場になって原稿と対峙し、
両方にとって最適解を出す役割を担っていると感じた
見落としがないか、時間的制約、多彩なジャンル…
緊張感のある中でやり切る精神力に感服です
意外だったこと
本書の中で
P.105 毎日新聞社校閲センター 塩川まりこさん
P.133 雑誌 BRUTUS 中根龍一郎さん
筆者と上記お二人の対談内容が特に印象に残っている
私はこの本を読むまで
校正は正解・不正解がある仕事で、
その正誤が分かりやすいのではないかと思っていた
文字の誤植の有無、文脈との相違がないか、
内容は事実であるか…
けれど 実際は全く違っていて
校正者の「正しさ」で判断しない
校正に正解も不正解もない
・疑問に対して書き手に確認する・聞く
・事実の裏付けと共により適切な表現方法を提案する
そして、判断は書き手に委ねる
インタビューの中で所々
「(確認や指摘出しに)迷う」
「校正すればするほど自信がなくなる」
というお話があった
自分は書き手の思いを正しく汲み取れているのか、
その上で必要な指摘なのだろうか
言葉と真摯に向き合うからこその揺らぎがあり、
校正は曖昧な正解のない仕事なのだと知った
本の中(デザイン)も好き
作業中の姿、インタビュー中の様子は
校正のプロ達の空気感が伝わり
丁寧な仕事が垣間見えるような写真ばかり
手書きサインや押印などデザインも凝っていて
写真だけを見ながらページを捲るのも楽しい
使い込まれた仕事道具の数々
見台(けんだい)、愛用のペン、ルーペ、鉛筆、
ふせん、膨大な資料…
何度もページを捲ったであろう用語集に付けられた
無数のタブは、言葉と“ 向き合う ” 以上に
“ 戦っている ” のではと思うくらい迫力があった
どんな方におすすめしたい本か
おすすめな方
♢言葉との向き合い方について考えを深めたい
♢校閲の仕事に興味がある
インタビュー(対話)形式で書かれているので、
校正について知識がなくても読みやすい
自分もその場にいるような感覚で、会話を通して
実際の業務内容や仕事に対する在り方・考え方を
知ることができる
私自身校正は「聞いたことがある」程度の知識量で
「校正とはどういうもので〜…である」といった
文字の羅列だけでは読み切れなかったかもしれない
おすすめしにくい方
♢校正・校閲の実際の方法( 実践 )を細かく
体系的・網羅的に知りたい方
♢ビジネス書や実用書のような
単著形式が読みやすい方
※ 筆者が一人で客観的事実を述べていく形式
地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子
2016年放送 大手出版社の校閲部が舞台のドラマ
地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子(日本テレビ)
原作は宮木あや子さんの小説「校閲ガール」シリーズ
(KADOKAWA・角川文庫刊)
以前1話だけ見たことがあったのですが、
当時はあまりそそられず
今回校正の本を読む前にドラマで楽しみながら
予習しよう、と軽い気持ちで見始めました
ドラマ内で出てくる原稿やセリフ文字の演出、
華やかなファッションでテンポよく進むので
2日間で全10話+スペシャルまで一気見してしまった
主人公の河野悦子はファッション誌の編集部志望
演じるのは石原さとみさん お顔が大優勝で可愛い
なぜあんなにも丸メガネが似合うのか… 眼福
オンの戦闘服も、オフのルームウェアも
シーン毎にファッションがくるくる変わり、
おしゃれを存分に楽しんでいる様に
見ているこちらまで気分が上がる
“好きなものに囲まれて生きる”を体現するような
キャラクターで「何着て行こう〜」と幸せそうに
クローゼットを開けるとぎっしり詰まった
カラフルなお洋服や小物たち
憧れない女性はいないのでは…!?
第5話の冒頭
デートの行き先に“昭和レトロ”と言われたら、
悦子の考える「昭和レトロ」を全身で表現する
待ち合わせ場所に現れた悦子の姿を一目見て
「可愛い…!」とぴょこぴょこ跳ねながら言える
幸人(菅田将暉さん)も最高
梅雨で夏になったら着たいと思っていたワンピース
まだ着れてないな、最近メイクやお洋服
気合い入れて楽しめてないな、と思った
次の晴れの日には自分史上最大級のおめかししよう
いつも真っ直ぐな悦子の
「 仕事に限らず、人生だってなんだって(中略)
楽しめるかどうかってその人の気持ち次第 」
という台詞… ぐぅぅっと刺さりますね (´・ω・`)

おわりに
一口に「校正・校閲」と言っても、
媒体や働く場所が変われば求められる
技術・優先事項が変わる
書き手と読み手 両者へ思いを馳せ、
より良い言葉を世に届ける仕事
ますます「言葉」を生業とする方々への
尊敬と憧れが強くなりました

言葉を丁寧に扱う人の
「 誰かに思いを馳せる優しさ 」が好きだ。

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